古き中に温もりと新しさを見つけに、鞍馬口通をてくてく散歩

2021/10/8

「観光地もいいけれど、普段着の京都をのんびり味わってみたい」という方には、歩いて楽しむまちめぐりがおすすめです。例えば、東西を走る鞍馬口通。昔の都の出入口「京の七口」のひとつ・鞍馬口に通じた道です。鞍馬口通は東の賀茂川から西の金閣寺へと続くのですが、今回は地下鉄・鞍馬口駅から出発して西に進むコースをご案内します。古い建物をリノベーションし、昔の佇まいをそのままに生かし続ける新しいカフェやショップ、歴史を感じる石碑や町名、この通りだからこそ味わえる風景など、まちあるきの楽しさに出会えます。

まずは、駅から徒歩数分、カフェの角に立つ石碑「近衛家別邸 御花畑御屋敷跡」。なんと幕末に薩長同盟が締結された場所なのだとか。

薩長同盟石碑
(歴史的舞台となった印がここに!)

町名を書いた消火栓や古い住居表示の看板も目にとまります。「長乗」と名の付く長乗東町・長乗西町のあたりは、刀の金工師・後藤長乗が徳川家康から土地を賜り住んだ場所なのだそう。町名が歴史的人物の名前に由来するのも京都ならでは。

長乗
(味わい深い住居表示板)

堀川通との交差点では、ベンチのある小さな緑地帯から東を振り返ってみてください。ほら、比叡山がきれいに見えますよ。

比叡山
(東の空に稜線が際立つ比叡山)

さらに西へ進めば、そこは織の町・西陣の北にあたるエリアです。この辺りからなんだかノスタルジックな気分になるのは、昔ながらの建物が増えるからなのかも。そよ風に暖簾が揺れる甘味処「うめぞの茶房」。新感覚の和スイーツ「かざり羹」がいただけます。

うめぞの茶房
(格子が美しい、凛と佇む「うめぞの茶房」)

続いては、元銭湯がカフェに生まれ変わった「さらさ西陣」。アニメ映画「千と千尋の神隠し」に出てきそうなお風呂屋さんみたいでわくわく。

さらさ西陣
(玄関の唐破風屋根が印象的「さらさ西陣」)

お隣は、もともと学生寮だった建物に手作りショップが集まった「藤森寮」。寮内の「ガラス工房nazuna薺」でガラス細工体験というのもいいですね。

藤森寮
(元学生寮がおしゃれなショップに変身「藤森寮」)

少し先には「今宮参拝道」と刻まれた石柱が。ここから北へ上って建勲神社、そして今宮神社を訪れるのもよさそうです。

今宮神社参道石碑
(ここから今宮神社まで北へ約1㎞)

このほかにも伝統の技が光る唐紙専門店、人気のパン屋さんや、お蕎麦屋さん、“温泉”と名のつく昔ながらの銭湯などなど、ふらりと入ってみたくなるお店がたくさん並びます。地元の人たちが普段使いするお店でお惣菜を見繕うというのもいいかもしれません。この町の佇まいがほっと心を落ち着かせてくれるのは、古いものを慈しみ、手を入れ、大事に使い続けていくという、ものに対する人の愛情に包まれるからなのでしょう。鞍馬口通さんぽ、楽しんでくださいね。