船岡温泉~レトロな銭湯~
船岡温泉の創業は大正12年(1923年)、お風呂も楽しめる料理旅館「船楼」の付属浴場がルーツである。戦後、公衆浴場専業となり、文化庁の登録有形文化財にも指定された由緒ある唐破風造の建物が迎えてくれる。
千本鞍馬口を東に数分行くと、京都の名石である貴船石で組まれた豪華な石組が見えてくる。脱衣場は、漆塗りの格天井の中心に鞍馬天狗と牛若丸をモチーフにした彫刻が据えられている。男湯と女湯を仕切る透かし彫りの欄間は、葵祭り・今宮神社祭礼や上海事変をモチーフにしている。肉弾三勇士や双眼鏡を覗く人、電話をかける人、空飛ぶ飛行機など見ていても飽きない。素晴らしい彫刻芸術を鑑賞することができ、夢の世界の美術館にいるようだ。
洗面場には、一面貼りめぐらされた花柄の鮮やかなマジョリカタイルがふんだんに使われていて、まるで万華鏡の中にいるようである。浴室へは、池の上を渡り廊下で進む趣向になっていて、花崗岩でつくられた橋の上を渡る。池には立派な鯉が泳いでいる。
さらさ西陣~銭湯カフェ 銭湯再生~
船岡温泉から、鞍馬口通りを東に5分ほど歩くと、唐破風のある町家風銭湯が現れる。
平成11年(1999年)廃業になった「藤森湯」という銭湯として営業していた建物が、現在はカフェ「さらさ西陣」としてぬくもりを提供している。人が集う場所で、こちらも文化庁の登録有形文化財になっている。浴室をそのまま客席に改装し、船岡温泉と共通するマジョリカタイルをふんだんに使い、エキゾチックな雰囲気を楽しめる。それもその筈、船岡温泉初代が昭和5年(1930年)に建てたものだ。建物の外観はそのままにし、浴室のつくりを残して改装され、浴湯当時の面影を偲ぶことができる。
店内は、格天井と呼ばれる高い天井、和製マジョリカタイル全面張りの洗面場、浴室の壁面、男湯と女湯を隔てていた壁におおわれる。上を見ると、湯気抜きから注ぐ太陽の光、床下には浴槽が眠っている。まさに銭湯再生を果たした大正ロマンの心地よい空間である。