入浴・癒し・交流の場 銭湯再発見!~紫野温泉編~

2024/3/1

♨2024年の注目は「むらさき」!

京都市北区上門前町にある「紫野温泉」。こちらは大徳寺の門前にあたり、お寺はすぐそこ。かつてこの辺りは「紫野」という野原が広がっており、歴史にも多く登場する場所です。今では住宅街となり、野原はないものの、「紫野」という地名は今も残っています。そんな地にある「紫野温泉」をご紹介します。

(大徳寺の門前にある「紫野温泉」)
(味わいのある看板)

「紫野温泉」を訪れると、そこに現れるのはなんと、マンション。1階に屋根瓦の玄関があり、大きな「ゆ」の暖簾と「紫野温泉」と書かれた木の看板が、お客様を出迎えてくれます。

さて、今回もそんな銭湯定番「ゆ」の暖簾を潜ってみましょう。

「あれ……!?」

いつもの銭湯のイメージではありません。少し控え目な下駄箱エリアの先には、クリニックのようなフロアが広がります。

そこにあるのは、銭湯定番の番台ではなく、「フロント式」の受付。銭湯らしい「いらっしゃい」との声を掛けてもらい、料金を支払います。

こちらのフロントの前には、休憩スペースがあり、椅子・テーブルと座敷があります。入浴後には絶対にここで休憩したくなる、心地の良い空間です。

(木札スタイルの下駄箱)
(フロント前の休憩スペース)
(紫野温泉オリジナルのTシャツも販売)

♨お風呂の種類も豊富!

京都の銭湯は、男女湯を仕切る壁沿いに浴槽が配置され、鰻の寝床と称されるような奥に細長い浴室が特徴ですが、こちらではその概念が覆ります。

脱衣所から数段の階段を下りて、浴室に入ると、正面には早速「露天」の文字が目に飛び込んできます。こちらには露天風呂があり、石造りの浴槽は温泉地を思わせます。2023年10月にリニューアルしたばかりで、ラドン鉱石が入った、紫野温泉で一番大人気のお風呂となっています。

(露天風呂への入り口)
(人気の高いラドン鉱石を入れた露天風呂)

室内のお風呂にも、他の銭湯では見られないものがあります。

まずは「ミルキー風呂」!丸い浴槽も珍しいですが、お湯は真っ白。まさにミルクのようなお風呂です。

もう1つは水風呂定番のライオンの蛇口。他の銭湯よりも大きく、まるで見事なオブジェのような、力強さ、迫力を感じます。

(真っ白なミルキー風呂)
(まるでオブジェのようなライオンの蛇口)

他にもジェットバス(結構な圧があります!)、ラドン鉱石が入ったお風呂、電気風呂があり、人気のサウナは8人ほどが入ることができます。テレビもあるので、ゆっくり汗を流すことができますよ。

どのお風呂から入るか、次はどのお風呂にしようか……と、浴室では贅沢な悩み、迷いが出てきます。お風呂好きにはこの選択肢が最高に良い気分になります。

(テレビ付きの広いサウナ)
(パワーのあるジェットバス)
(レトロさが残るカラン)

♨京都の銭湯の最先端!

紫野温泉」を経営している中井義昭さんと息子の克演さんに話を聞きました。

今はマンションと一体となっている「紫野温泉」ですが、元々は銭湯のみの建物で、その開業も戦前に遡るとのこと。昭和も終盤頃、前経営者がマンションを建て、銭湯と一体化したのだそうです。その後、マンションを含めた建物自体が売りに出て、当時大阪で銭湯を経営していた中井義昭さんは、この建物を購入し、「紫野温泉」を継承しました。

中井さんが最初に始めたことがリニューアルでした。銭湯の特徴である番台を止め、フロント式に変えたのです。「当時、京都の銭湯でフロント式にしたのは、うちが1番ぐらいではないかな。それぐらい当時の京都では珍しかったよ」とのこと。

今は時代の流れで、番台は数を減らし、新規で番台の設置はできないそうです。まさに時代の流れを見据えていたかのようなリニューアルでした。

♨おススメは休憩スペース

前述したように、フロントの前には休憩スペースがあります。おススメは、昨秋にスペースの一部をリニューアルした座敷。これがヒットしました。「家族連れが増えました。ここでみんな寛いでいくんです。寝ころぶのは控えていただいているのですが……(笑)」

入浴だけでなく、このようなスペースがあるのも嬉しいですね。

ちなみに昔は、ゲームセンターにあるデスク型のゲーム機を置いていたとのこと!

(ゆっくりとくつろげる座敷は大人気!)

♨支えているのは学生さん

「ここは学生さんに支えられている。この辺りは学生が多く住んでいるんですよ。」

中井さんは学生の重要性を語ってくれました。他にも東山区の銭湯も同じような状況だそうで、人口の1割が学生と言われる京都の特徴が、銭湯にも影響を与えているとは驚きですね。

「紫野温泉」の上にあるマンションも実は学生マンションであり、ここに住む「紫野温泉」は無料という特権があるようです!

息子の克演さん曰く、最近は学生の銭湯の利用形態も変化しており、昔は深夜に近い時間に集中していましたが、今では夕方などの早い時間の利用も増えたとのこと。銭湯の利用時間の分散化が進んでいるようで、銭湯側は混雑緩和に寄与していると安堵しています。

サウナブームもあり、入浴だけでなく、楽しむ目的で訪れる学生も多くなったようです。このような学生は、銭湯の存在が学生時代の一生の思い出になることでしょう。

私もその1人です!銭湯にはそんな特別な魅力がありますね。

「紫野温泉」はもはや「プチスーパー銭湯」とも言うべき、充実した銭湯です。

「むらさき」に注目が集まる2024年は、是非「紫野温泉」へ♨

(「紫野温泉」の中井克演さん)