毎回、その道のプロフェッショナルの方や地域にお住いの方などに、船岡山とその周辺の魅力を教えていただく連載「船岡山と私」。
第5回目は、【写真家】田村泰雅さんに「船岡山と写真、時々、パン」をテーマにご紹介いただきます。
【田村泰雅さんのプロフィール】
第5回「船岡山と写真、時々、パン」~写真家:田村 泰雅さん編~
18歳の時に、大学進学で香川から京都へ移り住んだ。まだ京都の右も左も分からない私は、佛教大学紫野キャンパス近くの下宿で一人暮らしをすることに。烏丸北大路にある大谷大学に通っていたので、船岡山は通学の道中にあった。近くで下宿している大学の友人がいて、広場で一緒にサッカーをしていたことは、今でも懐かしい思い出だ。
彼と出会った頃に、大学の写真部に入った。当時は、フィルムカメラとデジタルカメラの変遷期。アルバイトをして貯めたお金で、憧れだったキヤノンのフィルムカメラを購入した。街の風景や大学の友人を撮影することに夢中になり、被写体を探しては、船岡山にも足を運んだ。
ある日、公園のサイレン塔の辺りで、太極拳の練習をしている人たちと出会った。朝早くから、ゆっくりと動く人たちは記憶に残っていて、歳月を経た今でも練習しているのだろうかと思い、訪ねてみることに。すると、6名の人たちが趣のある音楽に合わせて、呼吸を整え、ゆっくりと動いていた。学生時代に見た風景が変わらず目の前に現れたので、正直驚いた。同時に、変わらない光景になんだか嬉しくなり、シャッターを切った。
「友心会」という団体で、午前8時50分頃から30分ほど練習しているらしい。太極拳のゆっくりとした動きのように、船岡山には、ゆっくりとした時間が流れていた。木漏れ日が射し込む南側の小道を建勲神社に向かって進むと、木々の隙間から小鳥のさえずりが聞こえてくる。春先には、東参道の石段沿いに河津桜が咲き、枝の上には、花の蜜を吸うメジロの愛らしい姿が見られる。
人との出会いや花鳥風月を楽しめる一方、お腹が空いてきた時には、近くのパン店でパンを購入し、公園のベンチで食べることができる。千本北大路を少し下がったところにある「たまやベーカリー」は、2007年に開店したパン店。オーナーの臼井好美さんと父・茂樹さん、母・治子さんのアットホームな会話に、私はいつも癒されながらパンを購入する。
さらに鞍馬口通まで下がって、東へ進むと、「ブーランジェリー トム・ソーヤー」の紅色のテントが迎えてくれる。1994年に開店した同店は、オーナーの三矢善之さんと妻・知里さんが切り盛りしている。
天気の良い日には、お気に入りのパンを持って、ベンチに腰掛け、パンを頬張る。無数のパン店が四方八方に点在する京都市内を一望しながら食べるパンは、いつもと一味違うはず。
(パン店の基本情報)
【たまやベーカリー】
電 075-451-7277
営 8:00頃〜19:00
休 土曜
住 京都市北区紫野西舟岡町13-3
【ブーランジェリー トム・ソーヤー】
電 075-451-8007
営 7:00~19:00
休 月・火曜
住 京都市北区紫野南舟岡町72-17