♨銭湯集中!
多くの銭湯が営業している北区の中でも、船岡山エリア、とりわけ大徳寺の周辺は、特に銭湯が密集しているエリアです。
その数なんと5軒!
北大路大宮の交差点から大宮通を北に進めば「新大宮商店街」があります。商店街がある大宮通りに面して建つのが、今回訪問する「門前湯(もんぜんゆ)」。大徳寺のすぐ東側、「紫野門前町」に位置する銭湯です。
今回も「ゆ」の暖簾を潜ってみましょう。
銭湯定番の下駄箱に靴を入れ、木の鍵を抜きます。この木の鍵も趣があって良いものです。令和の時代まで受け継がれる、「銭湯」になくてはならない道具のひとつですね。
番台さんの「いらっしゃい」の言葉を皮切りに、さあ「銭湯時間」の開始です。
♨お風呂の楽しみ
浴室の中央には、長方形の大きな浴槽があり、深い風呂と電気風呂、浅い風呂が並びます。その両サイドには「カラン」と呼ばれる蛇口が並び、出入口の横にはジェットバスのお風呂があります。
奥には定番のライオンの口から水が注がれる水風呂(冷たい!)が、その横には数名が入れる高温サウナ(かなり暑い!)があります。さらに、水風呂とサウナの間には外に出る扉があり、露天風呂へとつながります。
このように見てみると、本当に京都の銭湯はお風呂の種類が充実していますね。しかも、門前湯は15時に開店してから、なんと深夜2時まで営業している、京都市内でも数軒しかない貴重な深夜営業の銭湯です。まさに「銭湯パラダイス」!
♨「銭湯」と共に生きる!
今回は常連のお客さんにお話を聞かせていただきました。
若い頃から毎日門前湯に通われているかなりの常連さんで、年齢はなんと86歳!「来ないと体の調子が整わなくなる」のだそうです。「年齢を重ねるにつれ、来る楽しみが増している」と、嬉しそうに語ってくれました。
♨「門前湯劇場」の中心は何と言っても「番台」!
そんな門前湯を支えているのが、経営者の吉本遵子さんです。
門前湯は、昭和初期には創業していたそうですが、吉本家が昭和13年に石川県から京都に引っ越し、前経営者から引き継いだとのこと。遵子さんも石川県輪島のご出身で、吉本家に嫁ぎ、現在3代目です。息子の誠さんたちも手伝いながら、門前湯を支えています。
番台では遵子さんが笑顔で出迎えてくれ、入浴後のお客さんとの談笑を楽しみ、そしてまた笑顔で見送ってくれます。遵子さん曰く「銭湯があるから、いろんな人と出会え、お話しすることができる」のだそう。
そんな遵子さんが3年前に起きた嬉しいエピソードを教えてくれました。その昔門前湯に通ってくれていた立命館大学の野球部だった方々が、何十年ぶりかに訪れ、声をかけてくれたのだそうです。聞けば、学生時代を過ごした京都で久々に集まった彼らは、思い出の地である門前湯を訪れたのだとか。遵子さんも一緒に懐かしい話が弾んだそうです。
銭湯の魅力はもちろん「お風呂」ですが、人と接する機会が激減した昨今、「コミュニティ」としての銭湯を楽しむことができるのも魅力のひとつです。ここ門前湯では、遵子さんがそんな楽しい時間を提供してくれます。
今年はすてきな出会いを求めて、北区の銭湯を楽しんでみませんか。