連載『ものづくりの伝統が息づくまち・船岡山 工房めぐり』 第1回「京都 おはりばこ」

2024/5/20

職人のまちでもある、船岡山エリア。
古くより、ものづくりのまちとしての風土が育まれてきたこのエリアでは、歴史ある伝統工芸の工房はもちろん、近年では、新感覚のギャラリーや若手作家のアトリエなども続々と誕生しています。船岡山エリアの個性豊かな工房をめぐって、ものづくりの文化にふれてみませんか?
第1回目は、「京都 おはりばこ」をご紹介します。

ハレの日からふだんの日まで、髪を美しく彩るつまみ細工の専門店「京都 おはりばこ」

洛北の名刹・大徳寺の東隣に暖簾を掲げる「京都 おはりばこ」は、1946(昭和21)年、西陣で糸屋として創業したのがはじまりの、つまみ細工専門店です。

(1階がショップ、2階が工房、奥の離れが体験教室となっている)
(七五三、卒業式、成人式、結婚式などハレの日を彩る髪飾りが並ぶ)

店内には、つまみ細工のかんざしやヘアピンといった髪飾りをはじめ、アンティークのきもの生地で作られた和小物など、色とりどりの商品が並んでいます。

(梅、菊、桜をモチーフにした「そめはなUピン」)

「日本一美しい髪飾りを作るのではなく、日本で一番、つける方を美しく魅せる髪飾りを」という思いのもと、2階の工房で職人の手により作られたつまみ細工は、眺めているだけでも心が華やぎます。

(髪飾りとして使うほか、工夫次第で活用シーンも広がる)
(アンティークのきもの生地をつかった1点もののピルケースも人気)

庭園の奥に立つ離れの京町家で開かれるワークショップでは、舞妓さんの髪飾りと同じ正絹羽二重の手染め生地を使い、職人と同じ技法を駆使するつまみ細工が体験できます(1名3300円~。希望日の前営業日までに要予約)。

(つまみ細工体験で作れるバッグチャーム、クリップ、かんざし)

クリップ、かんざし、バッグチャームのいずれかを作るのですが、花のかたち、花びらの色、花芯、花につける“下がり”、すべて好きなものを選んで自由に組み合わせられるのも魅力です。

(花びらの生地は定番色と月替わり限定2色の合計10色から選べる)
(鮮やかな手さばきでかんざし作りを披露してくれた、代表の北井秀昌さん)
(正方形の生地に糊をつけ、花びらを1枚ずつ作っていく)
(手先の器用さに自信がなくても、やさしく教えてもらえるのでご安心を)
(生地が小さくなるほど裁断の難易度が増す)

通常非公開の2階の工房も特別に見せていただきました。

こちらは反物を一辺が3.5cmの正方形に裁断しているところ。長さを厳密に合わせるのはもちろんのこと、正絹羽二重生の目をきちんとそろえて切るのが難しいのだそうです。

(真剣なまなざしでピアスを製作中)

裁断スペースに隣接する部屋では、商品を製作。初心者から見ると、気の遠くなりそうなほど細やかな作業です。

「高度経済成長期の頃には大ぶりのものが飛ぶように売れたのですが、現在は昔と違って、初詣やひなまつりなど、きものを着る行事が減ってきました。でも、需要がないからといってなくしてしまえば、伝統が途絶えてしまう。髪飾りと向き合い、提案し、作り続けることに意義があると考えています」と、代表の北井秀昌さん。

最近は、祖父の代で扱っていたという「くみひも」を活用した髪飾りを作って原点に立ち返ったり、その一方で、原色ではなく洋服感覚のくすみ色で商品を展開したり。伝統を大切に守りながら、移ろいゆく時代とともに確かな歩を進めています。

京都 おはりばこ
電 075-495-0119
営 10:00~17:00
休 水曜
所 京都市北区紫野下門前町25
交 市バス停「大徳寺前」から徒歩2分
P あり(提携駐車場)
京都 おはりばこホームページ