職人のまちでもある、船岡山エリア。
古くより、ものづくりのまちとしての風土が育まれてきたこのエリアでは、歴史ある伝統工芸の工房はもちろん、近年では、新感覚のギャラリーや若手作家のアトリエなども続々と誕生しています。船岡山エリアの個性豊かな工房をめぐって、ものづくりの文化にふれてみませんか?
第1回目は、「京都 おはりばこ」をご紹介します。
ハレの日からふだんの日まで、髪を美しく彩るつまみ細工の専門店「京都 おはりばこ」
洛北の名刹・大徳寺の東隣に暖簾を掲げる「京都 おはりばこ」は、1946(昭和21)年、西陣で糸屋として創業したのがはじまりの、つまみ細工専門店です。
店内には、つまみ細工のかんざしやヘアピンといった髪飾りをはじめ、アンティークのきもの生地で作られた和小物など、色とりどりの商品が並んでいます。
「日本一美しい髪飾りを作るのではなく、日本で一番、つける方を美しく魅せる髪飾りを」という思いのもと、2階の工房で職人の手により作られたつまみ細工は、眺めているだけでも心が華やぎます。
庭園の奥に立つ離れの京町家で開かれるワークショップでは、舞妓さんの髪飾りと同じ正絹羽二重の手染め生地を使い、職人と同じ技法を駆使するつまみ細工が体験できます(1名3300円~。希望日の前営業日までに要予約)。
クリップ、かんざし、バッグチャームのいずれかを作るのですが、花のかたち、花びらの色、花芯、花につける“下がり”、すべて好きなものを選んで自由に組み合わせられるのも魅力です。
通常非公開の2階の工房も特別に見せていただきました。
こちらは反物を一辺が3.5cmの正方形に裁断しているところ。長さを厳密に合わせるのはもちろんのこと、正絹羽二重生の目をきちんとそろえて切るのが難しいのだそうです。
裁断スペースに隣接する部屋では、商品を製作。初心者から見ると、気の遠くなりそうなほど細やかな作業です。
「高度経済成長期の頃には大ぶりのものが飛ぶように売れたのですが、現在は昔と違って、初詣やひなまつりなど、きものを着る行事が減ってきました。でも、需要がないからといってなくしてしまえば、伝統が途絶えてしまう。髪飾りと向き合い、提案し、作り続けることに意義があると考えています」と、代表の北井秀昌さん。
最近は、祖父の代で扱っていたという「くみひも」を活用した髪飾りを作って原点に立ち返ったり、その一方で、原色ではなく洋服感覚のくすみ色で商品を展開したり。伝統を大切に守りながら、移ろいゆく時代とともに確かな歩を進めています。
京都 おはりばこ
電 075-495-0119
営 10:00~17:00
休 水曜
所 京都市北区紫野下門前町25
交 市バス停「大徳寺前」から徒歩2分
P あり(提携駐車場)
京都 おはりばこホームページ