連載『船岡山 通りさんぽ』第2回「北大路通」

2024/7/3

北方守護の神「玄武」が宿る、京都始まりの地・船岡山。四季折々の自然や眺望、ふもとに点在する神社仏閣、史跡、お店も魅力的ですが、船岡山エリアを囲む“通り”に注目してみれば、散策の楽しみも倍増します。この連載では、時代と人と物語が交錯し、千年の都を織り上げた“通り”をフィーチャー。
第2回目は、「北大路通」をご紹介します。

昭和の頃は市電も走った「北大路通」は、京の七野のひとつ・紫野を貫くストリート

船岡山エリアの中心部を東西に貫く北大路通は、東山の白川通から西大路通に至る約5.5kmの通り。1895(明治28)年から1978(昭和53)年まで80余年にわたって、市電が走っていた通りでもあります。北大路通の中核となる地下鉄北大路駅は、かつて市電の烏丸車庫があった場所です。

北大路通を西へと進んでいくと、洛北の名刹・大徳寺の南端が通りに沿って続く一帯があります。平安時代、平安京の北側には貴族たちが狩猟をしたり、野草を摘んだりする7つの野原があり、「京都七野」と称されていました。内野、北野、平野、点野、紫野、蓮台野、上野の7つで、そのうちのひとつ「紫野」がこの界隈です。

(雲林院の山門)

淳和天皇が、「紫野院」という名の離宮を造営して以降は、貴族たちが桜や紅葉を愛でる場所としても親しまれるようになりました。

869(貞観11)年、僧正遍昭が招かれ、紫野院は「雲林院」と名を改められ、官寺(国が管理する寺)となりました。鎌倉時代に入ると、広大な寺域を誇った雲林院の敷地に大徳寺が建立されました。雲林院は大徳寺の門外塔頭として、現在、市バス大徳寺前からすぐ南の一角に境内を有しています。

(北大路通と千本通の交差点付近は交通量も多い)

大徳寺からさらに西へと進み、市バス「船岡山」の停留所から南へ下がると、ほどなくして船岡山への登り口があります。

(標高111.89mの山頂付近から京都市街を望む)

平安京の場所を選定する際、風水の思想「四神相応」にもとづいて、北(玄武)に当てはめたのがここ船岡山。紫式部のライバル・清少納言が随筆『枕草子』で「岡は船岡」とも称えた、由緒ある景勝地です。頂へと向かって木々の緑に包まれた道を上っていくにつれ、街の喧騒が遠のき、心がほどけていきます。

(賀茂川の対岸には、紅枝垂桜の名所・半木道も)

船岡山エリアからもうひと足延ばしてみるなら、西は世界遺産の金閣寺、東は賀茂川がおすすめです。賀茂川へは、地下鉄北大路駅付近からなら徒歩8分ほど。せせらぎの音を聴きながら散歩をする人や、ベンチでお昼寝する人、水面で羽を休める水鳥など、思い思いにくつろぎの時間を過ごしている姿が見られます。

今度の休日、北大路通を散歩して、心身をリフレッシュしてはいかがでしょうか。

北大路通のおすすめ立ち寄りスポット

その1:【PETIT FRANCE】

画像:【秋のパンまつり!船岡山周辺のおすすめパン屋さん3選】より

1985(昭和60)年にオープンし、地域の人たちに愛されてきた老舗ベーカリー。先代であるお父様から店を引き継いだ2代目店主が日々パン作りに勤しんでいます。抹茶クリームと抹茶あん入りのあんぱんや、だし巻きをサンドした調理パンなど小さめのサイズで食べやすく、価格も手ごろなのが魅力です。

PETIT FRANCEのご紹介記事はこちらから→

その2:【CHABON KYOTO】

画像:【京都好き大学生のお散歩⑤~船岡美味しいもん巡り~【CHABON KYOTO】(前編)】より

刀に見立てたフランスパンを手にしたクマさんがシンボルキャラクターのベーカリー。ベーグル、ベーグルサンド、食パン、惣菜パン、ケーキ、カヌレなどバラエティ豊富なパン&スイーツがそろいます。通り名にちなんだ「北大路メロンパン」「千本メロンパン」の2種のメロンパンも要チェックです。

CHABON KYOTOのご紹介記事はこちらから→

その3:【はしもと珈琲】

画像:【珈琲の香りをお店でも、ご自宅でも。「はしもと珈琲」】より

船岡山バス停の近くにある「はしもと珈琲」は、京都の老舗珈琲店・イノダコーヒ出身の店主が独立して1998(平成10)年に開いたコーヒーショップ。大徳寺や今宮神社など観光スポットに近いこの場所を選んだそう。自家焙煎の香り高い珈琲豆を購入したり、店内で淹れたてのコーヒーを味わったり、ホッとする時間を提供してくれます。

はしもと珈琲のご紹介記事はこちらから→