職人のまちでもある、船岡山エリア。
古くより、ものづくりのまちとしての風土が育まれてきたこのエリアでは、歴史ある伝統工芸の工房はもちろん、近年では、新感覚のギャラリーや若手作家のアトリエなども続々と誕生しています。船岡山エリアの個性豊かな工房をめぐって、ものづくりの文化にふれてみませんか?
第5回目は、「京都深村」をご紹介します。
うつわからテキスタイルまで。アートな雑貨がずらりと並ぶ、どら焼き屋さん「京都深村」
北大路大宮の一筋東、猪熊通沿いにある「京都深村」。
趣きのある京町家がショップ兼工房になっています。
京町家ならではの引き戸を開けると、店内には、陶器やテキスタイル小物が並んでいます。一見雑貨屋さんのようですが、実はどら焼き屋さん。
店主の太田利治さんがパティシエである娘さんと一緒に生み出したどら焼きには、あんこと生地に富士山の伏流水を使用。生地は太田さん自らが、一枚一枚ていねいに焼き上げます。
「出来るだけ添加物を使わないどら焼きを作りたいと思ったら、一枚一枚手焼きするしかなかったんです(笑)」と太田さん。
太田さんのどら焼きが一躍評判になったのは、コロナ禍真っ只中の2020年春。疫病退散のご利益がある妖怪「アマビエ」のイラストをいち早く取り入れ、「アマビエどら焼き」を生み出したのがはじまりです。かわいい上にご利益がありそう、と全国から注文が入るようになったといいます。
以来、「アルゼンチン風生キャラメルどら焼き」や「鳥獣戯画どら焼き」など、オリジナリティあふれる商品を生み出し続けています。
現在、新商品として注目を集めているのは、「紫式部どら焼き」。お店がある紫野の地にちなんだお菓子を作りたい、との思いから誕生した商品で、紫色のあんこには国産の紫芋を、生地には紫式部が産まれた時に産湯として使われたとされる、大徳寺塔頭「真珠庵」の井戸水を使用しています。
ほかのどら焼き屋さんと一線を画すのは、店頭にある自動販売機でどら焼きが購入できること。
太田さんは元々、ゲームセンターのマシンのデザインをしたり、サプリの製造を手がけたり、さらには富士山の山岳ガイドをしたり……と、異色の経歴の持ち主。これまでの経験から企画とデザインはお手のもので、店内に並ぶ商品の企画からデザインまでを一貫して手がけています。驚くことに、特許も多数取得されているのだとか。
取材の間も、「これをこうしたら、おもしろいかも!」「こういうことができるかどうか、今度相談してみよう!」などと、次々にアイデアが湧き出てくる太田さんの姿が印象的でした。
紫野の地にお店を構えたのは、「偶然だった」といいますが、西陣の織屋さんをはじめとする地域の方とのつながりが生まれたことは、「京都深村」の新たな可能性に繋がったそうです。「今後はこの紫野の地を拠点に、これまで培ってきたことをもっと発展させていきたい」と太田さん。
紫野は2024年大河ドラマの主人公・紫式部ゆかりの地であることから、地元の方と一緒に地域を盛り上げる活動にも力をいれておられます。散策途中に立ち寄れば、地域の見どころなども教えてもらえるかも!?紫野エリアを散策とともに、「紫式部どら焼き」を味わってみてはいかがでしょうか。
京都深村
電 075-755-7528
営 10:00~18:00
休 不定休
所 京都市北区紫野下石龍町2-9
交 市バス停「北大路堀川」から徒歩3分
P なし
京都深村ホームページ