連載『ものづくりの伝統が息づくまち・船岡山 工房めぐり』~職人のこだわり編~

2024/12/23

職人のまちでもある、船岡山エリア。
古くより、ものづくりのまちとしての風土が育まれてきたこのエリアでは、歴史ある伝統工芸の工房はもちろん、近年では、新感覚のギャラリーや若手作家のアトリエなども続々と誕生しています。

毎回船岡山エリアの個性豊かな工房を訪れている、連載『ものづくりの伝統が息づくまち・船岡山 工房めぐり』の中から、今回は職人のこだわりに焦点をあててご紹介します。

第4回:やがて土に還る自然素材で“壊れから生まれる美”を楽しむ。「平安堂 京都」で金継ぎ体験

「金継ぎ」とは、欠けたり割れたりしたうつわに、漆と金粉を使って“新しい景色”と新たな価値を与える伝統技法です。侘びさびの精神にもとづいた金継ぎは、“壊れの美”または“破調の美”と称され、傷が極力目立たないように隠す西洋のスタイルとは真逆のものです。

大徳寺の東向かいに構える「平安堂 京都」は、そんな金継ぎの技法を継承し、漆芸修復を行なう工房です。代表の清川廣樹さんは、半世紀にわたり、文化財、神社仏閣、仏像、古美術品などの漆芸修復に携わってきました。

工房では、金継ぎを施したうつわを販売するほか、事前予約制でワークショップも行なっています。

平安堂では、「やがて土に還る」ことを前提に、国産の自然素材のみを使用して金継ぎを行っています。「劣化し、土に還ることのない化学素材を使用しないからこそ、文化財や美術品が何百年と受け継がれてきた」と教えてくれました。

画像:【連載『ものづくりの伝統が息づくまち・船岡山 工房めぐり』 第4回「平安堂 京都」】より

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第5回:うつわからテキスタイルまで。アートな雑貨がずらりと並ぶ、どら焼き屋さん「京都深村」

北大路大宮の一筋東、猪熊通沿いにある「京都深村」は、趣きのある京町家を舞台にしたショップ兼工房。店内には、陶器やテキスタイル小物が並んでいます。一見雑貨屋さんのようですが、実はどら焼き屋さん。

店主の太田利治さんがパティシエである娘さんと一緒に生み出したどら焼きには、あんこと生地に富士山の伏流水を使用。生地は太田さん自らが、一枚一枚ていねいに焼き上げます。
このところ、新商品として注目を集めているのは「紫式部どら焼き」。生地に紫式部の産湯として使われたとされる、大徳寺塔頭「真珠庵」の井戸水を使用しています。

太田さんは、これまでのご経験から企画とデザインはお手のもの。店内に並ぶ雑貨は、商品の企画からデザインまでを一貫して手がけています。驚くことに、特許も多数取得されているのだとか。店頭にはめずらしいどら焼きの自販機も設置されていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

画像:【連載『ものづくりの伝統が息づくまち・船岡山 工房めぐり』 第5回「京都深村」】より

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第6回:好みの味に出会えるスペシャルティコーヒー豆専門店「AMANO COFFEE ROASTERS」

堀川通と今宮通が交差する場所に建つ「AMANO COFFEE ROASTERS」は、自家焙煎のスペシャルティコーヒー豆を扱う専門店です。

「良いコーヒーをリーズナブルに届ける」をコンセプトに、現地農園と良好な関係を育んでクオリティを高めた豆を仕入れています。豆ごとの特性に合わせた焙煎を行ない、最適なエイジング(熟成)を経て、ポテンシャルを最大限に引き出したコーヒー豆を販売しています。

店主の天野隆さんは、20年ほど前にスペシャルティコーヒーに出会って感動したことを機に独立。店内に据えた焙煎機で、日々の気候や、湿度、温度を見極めながら焙煎を行なっています。
店頭で個人客に販売するほか、全国のカフェ、イタリアンレストラン、スペイン料理店などにコーヒー豆を卸しています。訪れる人に、惜しみなく豆選びのアドバイスをしてくれる天野さん。そのフトコロの深さに惹かれて弟子入り志願に来る大学生や、この店で学び、開業に至る人もいるのだそうですよ。

画像:【連載『ものづくりの伝統が息づくまち・船岡山 工房めぐり』 第6回「AMANO COFFEE ROASTERS」】より

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今回は、職人や店主のこだわりにフォーカスして工房をご紹介しました。お店を訪ねて、それぞれの思いにふれてみてはいかがでしょうか。