取材のため訪れてみて、船岡山エリアは独特の魅力がある場所だと気付きました。
京都は世界遺産がそこかしこにある、まち全体が観光地で、どこに行っても見どころがあり、美しく情緒があります。けれど、生活感には乏しいというところも多い。
ですが船岡山界隈では、ごく普通の日常生活が感じられる中で、しっかりと京都の長い歴史や文化が根付き、そこから温故知新のカルチャーが派生している。
着物を着て歩く人も、ギターを抱えて歩く人も違和感なく溶け込んでいる。
観光はもちろん、住んでみたいと思わせるそんなところでした。
ちなみにそんな船岡山エリアの魅力を感じた私は、その次の新作も船岡山を舞台にしてしまいました。タイトルはそのままずばり『京都船岡山アストロロジー』(講談社文庫)です。
話を戻しまして、もし船岡山エリアで生活をしてみたら、と考えてみます。たとえば、ある日の休日は早いうちにウォーキングがてら船岡山に行き、左大文字山や京都のまちを眺めながら朝食を摂ってみたり。隣の建勲神社を詣って、大徳寺の境内を散歩し、玉の輿のご利益で知られる今宮神社を参拝して、あぶり餅を食べる。
帰りに江戸時代から続く『松屋藤兵衛』に立ち寄って松風を買い、『サーカスコーヒー』で好みの味わいブレンドを選んでもらう。
今度の休みは鞍馬口通の『さらさ西陣』でランチを食べようか。隣の藤森寮で色々な創作体験もしてみたい。賀茂川の河川敷で体操をするのも良い……そんなことを思って、ほくほくしながら帰路を歩く。
船岡山エリアに住んだら、そんな生活を送れるのではないか、と妄想が膨らみます。
もちろん住むのは難しいですが、船岡山エリアはそんな日常感と歴史や文化、サブカルが共存している町。ぜひ、たくさんの人に、この独特な魅力がいる場所に訪れてもらいたい。心からそう思う私でした。